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5月下旬にカナダ東部で発生した山火事による被害は国境を越え、約1,000キロ離れたアメリカ北東部でも深刻な大気汚染が蔓延しています。首都ワシントンやニューヨーク州では7日、およそ7,500万人の市民を対象に「大気汚染警報」を発令。アメリカ航空局は煙による視界不良を理由にニューヨーク行きの航空便を一時制限し、学校の休校や公共施設でも閉鎖が相次いでいます。
ニューヨーク州保健局は7日の会見で、「市内の大気汚染レベルは1960年代以降で最悪」と述べ、市民に不要不急の外出自粛を要請。子どもや呼吸器系の疾患がある方は特にリスクが高いとして、外出が必要な際は密着性の高い高性能マスクの着用を推奨しています。この事態を受けてバイデン大統領はホワイトハウスでの行事を延期し、「気候変動の影響を改めて痛感しました。健康と安全のため保健当局の指示に従ってください」と市民に呼び掛けました。また、煙の被害を受けた地域を支援し、カナダに約600人の消防士を派遣すると表明。さらなる要請があった場合は迅速に対応し、緊急事態宣言の発令も視野に入れる方針です。
今年カナダは観測史上最悪のペースで山火事が発生しており、7日までにカナダ国内で2,300件以上の火災が発生。焼失面積は例年同時期の10倍以上となり、約430万ヘクタールの森林が焼失し数万人が家を追われました。カナダではこれまでも頻繁に山火事が発生していますが、東西での同時火災は異例の事態です。火災現場では消火剤など消防資源がひっ迫し、政府は軍の派遣を要請。気候変動による自然災害の懸念が高まるなか、ECCC(カナダ環境・気候変動省)は今年の火災による被害額が過去最大に上ると予測しています。
また、火災が発生したカナダのアルバータ州、サスカチュワン州、マニトバ州では、火災による深刻な干ばつ被害が発生しています。今週ECCCが行った調査によると、カナダ全州において「異常な乾燥」、「中程度または重度の干ばつ」が観測されました。同省のエドワード・ストルジック研究員は、「気候変動の影響で春の訪れが早く秋は遅くなっており、空気の乾燥により火災の延焼期間も長くなっています」とコメント。さらに、「北極の温暖化が顕著になったことで大気のジェット気流が鈍くなり、高温で乾燥した空気の停滞が各地に火災をもたらしています」と指摘しました。
アメリカ気象予測センターのザック・テイラー氏は、「カナダからの煙がアメリカへ移動する状況は12日頃まで続き、ニューヨークなど北東部では13日から段階的に改善する見込みです」と説明。しかし、大規模な火災を食い止める抜本的な対策を講じなければ、今後も同じ状況が続くとの見解を示しています。
更新日 : 2024年5月15日
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